ダニによるアレルギー性鼻炎は小児に頻繁に見られ、くしゃみ、鼻汁、鼻閉など慢性的な症状により生活の質(QOL)や学業に支障をきたします。

アレルゲン免疫療法(AIT)は原因アレルゲンに対する免疫寛容を誘導する治療であり、対症療法とは異なり根治的な効果が期待できる唯一の方法です。舌下免疫療法(SLIT)は注射を用いないAITの一種で、日本ではダニアレルゲンを含む舌下錠が5歳以上の小児から処方可能です(ミティキュア、アシテア)。

このページでは、アレルギー性鼻炎がこどもに与える疾病負荷と5歳以上のこどもに対するダニSLITの有効性・安全性に関するエビデンスについてまとめます。

小児ダニアレルギー性鼻炎の疾病負荷

ダニによるアレルギー性鼻炎は小児において有病率が高く、患者と家族の日常生活に大きな負担を強います。
例えば米国では小児の最大40%がアレルギー性鼻炎に罹患しているとの報告があり、その経済的負担は年間約115億ドル(間接損失コスト42.8億ドルを含む)に上ると推計されています。(参考文献1)
日本においても小児期から思春期に通年性鼻炎(ダニなど)の有病率が高く、近年増加傾向にあります。(参考文献2)

生活の質(QOL)への影響

鼻づまりによる睡眠障害や夜間の中途覚醒により、日中の眠気や集中力低下を招きます。こどもは授業中に注意力散漫・記憶力低下を起こしやすくなり、学習効率や成績への悪影響が報告されています。
また、慢性的な鼻症状によるいらだちや気分の変動が見られ、これが対人関係や家庭生活にも波及して家族全体の負担となるケースもあります。(参考文献3)

実際、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患は米国で小児の病欠理由の上位を占めており、年間約200万日もの授業日がアレルギー疾患により失われているとの推計もあります。(参考文献4)

このように、アレルギー性鼻炎は本人の肉体的苦痛だけでなく学校欠席やパフォーマンス低下による教育面の遅れ、保護者の看病や通院負担、医療費の増加など多方面に影響する重大な疾病負荷を伴います。

小児に対するダニ舌下免疫療法の有効性

近年の研究により、小児のダニアレルギー性鼻炎に対するSLITの有効性が証明されています。ランダム化比較試験(RCT)やメタ解析のエビデンスでは、ダニSLITにより鼻炎症状および薬剤使用量が有意に改善することが示されています。

例えば2017年のメタ解析では、ダニを含む通年性アレルギー性鼻炎患者においてSLIT投与群はプラセボ群に比べ症状スコアが有意に改善し、対症療法薬の使用量も減少しました。(参考文献5)
注目すべきエビデンスとして、5~11歳の小児1460例を対象に1年間実施された世界最大規模のダニSLIT舌下錠のRCTがあります。この試験では、治療最後8週間の総合鼻炎スコア(症状+薬剤スコア)がプラセボ群より22%低減し、臨床的に意味のある改善(15%以上の改善)を達成しました。さらに鼻炎症状の重症度、薬剤使用量、QOL(生活の質)といった全ての評価項目で22%以上の相対的改善が見られ、従来の薬物療法を併用していてもSLIT追加により症状緩和と日常生活の改善に有意な効果があることが示されています。 (参考文献6)

これらの結果から、こどもにおいてもダニSLITは症状を有意に改善し、薬剤への依存を減らせる有効な治療選択肢であると裏付けられました。

小児に対するダニ舌下免疫療法の安全性

ダニSLITは一般に小児でも良好な安全性プロファイルを示し、副作用は軽度なものが多いと報告されています。

前述の大規模な小児を対象とした臨床試験において重篤なアナフィラキシーは一例も発生せず、全身性のアレルギー反応(軽症~中等度)はSLIT群で0.41%(3例)、プラセボ群で0.27%(2例)と発生頻度が低く、プラセボ群と大差ありませんでした。(参考文献6)

主な副反応は口腔内の掻痒感や咽喉刺激感など局所症状であり、これらは投与初期に見られるものの多くは軽度で自然軽快します。

実際、複数のレビューでもSLITは皮下免疫療法(SCIT)に比べ安全性が高いとされ、23年間の臨床使用で死亡例の報告がなく、アナフィラキシーの発生も極めてまれであることが示されています。(参考文献5)

従って、適切な指導の下で実施されるダニSLITは、こどもにおいても有効であるだけでなく安全に継続しやすい治療といえます。

アレルギー性鼻炎に関するガイドラインの記載

日本のガイドライン(参考文献7)では、ダニアレルギーに対するアレルゲン免疫療法の適応は原則として5歳以上とされています。舌下錠製剤の添付文書上も5歳以上が対象年齢と規定されており、こどもであっても舌下保持など治療手技に協力できることが必要条件です。
5歳未満の幼児への実施例も一部報告されていますが、安全性・有効性が確立していないため専門医の判断の下で慎重に行うべきとされています。

適応患者の選択に関して、「ダニが原因のアレルギー性鼻炎と確定診断された患者すべてが免疫療法の適応になりうる」と記載され、特に抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻など従来の薬物療法や外科的治療で十分に症状コントロールできない中等症~重症例に積極的に勧められると記載されています。またアレルゲン免疫療法は喘息の発症予防や合併喘息のコントロール改善といった疾患修飾効果も期待されるため、小児期からの積極的な導入が議論されています。

世界アレルギー機構(WAO)は「ダニSLITは小児の喘息および鼻炎に有効」との見解を示しており、大規模臨床試験の積み重ねにより小児への適用エビデンスが強化されてきています。(参考文献8)

以上より、5歳以上のこどもに対するダニ舌下免疫療法はエビデンスに裏付けられた有効で安全な治療法であり、従来治療で十分にコントロールできないこどもの症状緩和とQOL改善に寄与します。

加えて、アレルギー性鼻炎自体がこどもの生活や発達に与える負荷は大きいため、適切な時期に根本治療を導入し症状を軽減させることは、将来的な喘息併発の予防や、既に発症したアレルギー性鼻炎合併気管支喘息のコントロール状況の改善も含め重要と考えられます。

参考文献

  1. Underdiagnosed and Undertreated Allergic Rhinitis in Urban School-Aged Children with Asthma.Pediatr Allergy Immunol Pulmonol. 2014 Jun 1;27(2):75–81.
  2. 鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年,2008年との比較): 速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として―. 日耳鼻 123: 485―490,2020
  3. Allergic rhinitis and School Performance. Investig Allergol Clin Immunol 2009; Vol. 19, Suppl. 1: 32-39
  4. Economic impact and quality-of-life burden of allergic rhinitis. Curr Med Res Opin 2004; 20:305-317.
  5. Efficacy of Sublingual Immunotherapy for House Dust Mite-Induced Allergic Rhinitis: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Allergy Asthma Immunol Res. 2016 Dec 21;9(3):220–228.
  6. Advancing paediatric allergy care: key findings from the largest trial of house dust mite sublingual immunotherapy-tablets in children.Lancet Reg Health Eur. 2024 Dec 12;48:101167. 
  7. アレルゲン免疫療法の手引き. 日本アレルギー学会
  8. Sublingual immunotherapy: World Allergy Organization position paper 2013 update. World Allergy Organ J. 2014 Mar 28;7(1):6.