〜「発作の時だけの病気」ではなく、「慢性的に炎症がある病気」です〜
「ゼーゼーするのは風邪のせい?」
「発作がないときは、もう治ったのでは?」
気管支喘息(以下、喘息)は、症状がない時期も多いため誤解されやすい病気です。しかし現在の医学では、喘息は一時的な発作の病気ではなく、気道に慢性的な炎症が続く病気であることが明らかになっています。
この記事では、喘息がどんな病気なのかを、わかりやすく解説します。
1. 気管支喘息の定義
国際的な喘息ガイドライン(GINA)では、喘息を次のように定義しています。
気管支喘息は、慢性的な気道炎症を背景に、咳、喘鳴(ゼーゼーのこと)、呼吸困難、胸部圧迫感などの症状が変動性をもって出現する疾患である
重要なのは、
👉 症状がない時でも、気道の炎症は完全には消えていない
という点です。
2. 喘息の正体は「気道の慢性炎症」
喘息の気道では、次のような変化が起きています。
- 気道の内側に慢性的な炎症が存在する
- 気道が刺激に対して過敏になっている(気道過敏性)
- ちょっとした刺激(風邪、運動、冷気、アレルゲン)で
- 気道が狭くなる
- 痰が増える
- 咳や喘鳴が出る
このため、喘息は
❌「発作のときだけ治療する病気」ではなく
⭕ 炎症を抑え続けることで、発作を予防する病気
と考えられています。
3. なぜ子どもに多いの?
小児喘息は、乳幼児期〜学童期に多く発症します。
理由として考えられていること
- 子どもの気道はもともと細い
- 免疫や気道が発達途中
- ウイルス感染(風邪)を繰り返しやすい
- アレルギー体質を背景に持つことが多い
実際、喘息のある子どもの多くは、
- アトピー性皮膚炎
- 食物アレルギー
- アレルギー性鼻炎
など、他のアレルギー疾患を併せ持つことが多いことが知られています。
4. 「成長すれば治る」は本当?
「小児喘息は成長すれば治る」と聞いたことがある方も多いと思います。
エビデンスからわかっていること
- 一部の子どもでは、成長とともに症状が出にくくなる
- しかし、
- すべての子が治るわけではない
- 思春期・成人期に再燃するケースも少なくない
つまり喘息は、
👉 「自然に治ることもあるが、放置してよい病気ではない」
というのが現在の理解です。
5. 喘息発作はなぜ危険?
喘息発作では、短時間に気道が強く狭くなります。
- 息が吐けない
- 空気が入らない
- 酸素が足りなくなる
重症の場合、命に関わる状態になることがあります。
実際、世界的には今もなお、喘息による死亡はゼロではありません。
だからこそ、ガイドラインでは一貫して
「発作を起こさない状態を維持すること」
が治療の最重要目標とされています。
6. 長期管理薬の基本は「吸入ステロイド」
喘息の長期管理薬(予防の薬)の中心は、吸入ステロイド薬です。
なぜ吸入ステロイド?
- 気道の炎症を直接抑えることができる
- 発作の回数・重症度を減らす
- 長期的にリモデリングを防ぐ
吸入薬は、飲み薬と比べて
- 全身への影響が少なく
- 適切に使えば安全性が高い
ことが、多くの研究で示されています。
7. 喘息は「コントロールする病気」
現在の治療目標は、
- 日常生活に支障がない
- 夜間症状がない
- 運動や行事に普通に参加できる
- 発作で救急受診しない
という「良好なコントロール状態」を維持することです。
喘息は、
❌ 我慢する病気
❌ 発作が出たら考える病気
ではなく、
⭕ 適切な管理により症状がない状態を維持する病気
と考えることが大切です。
8. 保護者・学校の先生に知っておいてほしいこと
- 咳が長引く、運動で苦しくなる、夜間に咳が出る
→ 喘息の可能性があります - 発作時だけでなく、普段の治療が重要
- 吸入薬は「予防の薬」と「発作時の薬」で役割が違う
- 園・学校では必要があれば生活管理指導表を用いて
- 運動時の配慮
- 吸入薬の使用
- 発作時対応
を事前に共有することが重要です
まとめ
- 気管支喘息は慢性的な気道炎症の病気
- 症状がない時も、炎症は残っている
- 発作を起こさないことが治療の最大目標
- 吸入ステロイドを中心とした治療で、多くの子どもは普通の生活が可能
- 正しい理解と継続的な管理が、子どもの将来を守る
参考文献
- Global Initiative for Asthma (GINA).Global Strategy for Asthma Management and Prevention.
- 日本小児アレルギー学会.小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023
