マカダミアナッツアレルギーとは何か
~一般的な木の実類アレルギーの話題も含めて~
マカダミアナッツはヤマモガシ科に属する常緑樹であるMacadamia integrifoliaの種子です。近年、マカダミアナッツはクッキーやチョコレートなどに使用され、日本国内で一般に流通するようになりました。
マカダミアナッツアレルギーとは、食物アレルギーの一種で、マカダミアナッツに含まれるたんぱく質に対して体の免疫が過剰反応することで起こるアレルギー疾患です。
木の実類を食べた後に皮膚、呼吸器、消化器などに様々な症状が現れ、時にアナフィラキシーを引き起こすことがあります。
マカダミアナッツを含む木の実類類はごく微量の摂取でも反応が出ることが多く、少量であっても命に関わる重篤な症状を起こし得る食物の一つです。
発症年齢については、木の実類アレルギーは乳幼児期から発現するケースが少なくありません。
2023年の日本の調査でも、即時型食物アレルギーの原因食材として、1〜2歳でくるみは全体の約15%を占め鶏卵に次ぐ第2位、3〜6歳ではくるみが約28%と最も多く報告されています。カシューナッツも上位に入るようになりました。(参考文献1)
マカダミアナッツ単独のアレルギー発症件数自体はくるみ等に比べれば多くはありませんが(原因食物全体の1.1%、木の実類の中では4.6%)、こどもでも症例が報告されており注意が必要です。
特に、即時型症例数に対するショック症例数の割合はマカダミアナッツが一番高く18.8%でした。(言い換えると、マカダミアナッツによる即時型アレルギーの症状が出て受診した人のうち約2割がアナフィラキシーショックを起こしていた)(参考文献1)
また、卵や乳製品などの食物アレルギーでは成長に伴い多くの子どもが耐性を獲得しますが、木の実類アレルギーは自然に耐性獲得することが少なく大半が持続するとも言われます。
なぜ今マカダミアナッツアレルギーが注目されているのか
このような背景から、木の実類アレルギー全般への関心が高まる中で、マカダミアナッツも注目され始めています。
食習慣の変化も発症増加の一因です。近年の健康志向ブームや海外の食文化の影響で、家庭で木の実類を食べる機会が増えました。
アーモンドやくるみはもちろん、マカダミアナッツもチョコレート菓子や焼き菓子、シリアル、ナッツの盛り合わせ等で摂取される機会が増え、子どもが口にする可能性が高まっています。
実際、マカダミアナッツの輸入量は年々増加傾向にあり、それに伴ってアレルギー症例数も増えていることが消費者庁の調査で指摘されています。(参考文献2)
消費者庁が3年ごとに実施する「全国即時型食物アレルギー実態調査」でも、マカダミアナッツによる症例数は2018年度調査で原因食品中18位でしたが、2021年度には13位、2023年度には11位に上昇しており、統計上も増加傾向が示されています。(参考文献1)
この結果を受けて、日本では食品表示制度におけるアレルギー表示の対象にマカダミアナッツが追加されました。
具体的には、2024年3月に食品表示基準が改正され、マカダミアナッツが「特定原材料に準ずるもの」(表示が推奨されるアレルギー物質)の一つに新たに追加されています。
一方、くるみについては症例数の急増と重篤な報告が相次いだことから2023年に表示義務のある「特定原材料」に格上げされており(特定原材料は卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに+くるみの計8品目)、
ナッツ類の中でも優先度に差はありますが、
マカダミアナッツも公的に注意喚起すべき食品アレルゲンとして位置づけられたことになります。
以上のように、日本におけるマカダミアナッツアレルギーは「症例数の増加」や「食生活の変化」によって関心が高くなってきています。
他の木の実類との違いと交差反応の可能性
「木の実類アレルギー」と一口に言っても、その原因となる木の実類の種類はいくつもあります。
アレルギーの原因となり得る主な木の実には、くるみ、カシューナッツ、ピスタチオ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツなど多数あります。
一方、ピーナッツ(落花生)は豆科の植物であり、「ナッツ」とついていますが、木の実類ではありません。
マカダミアナッツは他の多くの木の実類(くるみやカシューナッツ等)とは科や属が異なる植物です。
マカダミアはヤマモガシ科マカダミア属に属し、他の一般的なナッツ類とは系統的に離れているため、特定の他ナッツとの交差抗原性(アレルゲンの共通性)は高くないと考えられます。
また、一種類の木の実類にだけアレルギー反応があり他の木の実類は大丈夫なケースもあれば、複数の木の実類に次々とアレルギーを発症するケースもあります。
したがって、特定の木の実類にアレルギーがある場合でも、他の木の実類すべてを一括で禁止する必要はなく、それぞれの木の実類ごとに症状の有無を確認していくことが大切です。
ただし例外的に交差反応が強い組み合わせが知られており、カシューナッツとピスタチオ、くるみとペカンナッツの組み合わせではアレルゲンが共通しやすいため、どちらかにアレルギーがあれば両方除去する必要があると報告されています。
これはカシューナッツとピスタチオがウルシ科、くるみとペカンナッツがクルミ科と、それぞれ近縁の植物であることに由来します。
幸いマカダミアナッツは上記のような明確な交差反応のペアには該当しないものの、実際に食べられるかどうかは少量から慎重に確認することが重要です。
誤食のリスクと予防策(給食・おやつ・家庭内での注意点)
マカダミアナッツアレルギーがあるこどもの安全を守るためには、アレルゲンの「誤食」を防ぐことが最も重要な対策となります。誤ってマカダミアナッツを含む食品を口にしないよう、家庭や学校で次のような注意と工夫が必要です。
市販の加工食品を利用する際は、必ず原材料表示とアレルギー表示を確認しましょう。
現在、日本ではマカダミアナッツはアレルギー表示推奨品目に指定されており、可能な限り食品パッケージに「マカダミアナッツ」を含む旨のアレルギー表示がなされます。ただし表示は義務ではなくあくまで推奨である点に注意が必要です(義務表示は特定原材料8品目のみで、マカダミアナッツは含まれません)。
特に輸入食品や小規模業者の製品では表示が十分でない場合もあります。
初めて与える食品は少量でも必ず原材料表示を確認し、不明点があればメーカーに問い合わせるか、安全が確保できない場合は食べさせない勇気も大切です。
マカダミアナッツは形が残った状態で使われる食品(例:チョコに入ったマカダミア、マカダミアナッツのトッピングが見えるクッキー)ばかりではありません。
ある調査では、マカダミアナッツを使用した加工食品の約24.5%がペースト状・油脂・粉砕された状態など見た目では含有が分からない形で使われていたと報告されています。(参考文献2)
また、木の実類全般に言えることですが、カレーやドレッシング、チョコレート、クッキー、パン、シリアル、アイスクリーム、さらにはエスニック料理のソースなど、意外な食品に木の実類が“隠れて”使われていることがあります。
このように目に見えない形でアレルゲンが含まれているリスクがあるため、「この料理には木の実類は入っていないだろう」と決めつけず、原材料欄のチェックや店員・調理者への確認を習慣づけましょう。
外食や中食での飲食時には特に注意が必要です。
日本では外食産業や惣菜販売においてアレルギー情報の提供義務はありませんが、利用者側が自主的に申告・確認することで事故のリスクを下げることができます。
遠慮せず「マカダミアナッツは入っていませんか?」と確認するようにしましょう。
不明点があったり、事業者の対応に疑問があったり、安全が確保できない場合は食べさせない勇気も大切です。
食物アレルギー児がいる学校や園では、給食の食材選定に細心の注意が払われます。
一般的な学校や園の給食でマカダミアナッツが使われるケースは多くありませんが、代替食の提供や除去対応が必要になる可能性があります。
保護者は入学・入園の時点で学校側にアレルギーを申告し、給食担当者や栄養教諭と連携して安全に配慮したメニューを検討してもらいましょう。例えば、デザートにナッツ類が含まれる場合は別メニューに差し替えてもらう、加工食品の使用時には事前に原材料を確認してもらう、など具体的な取り決めを行います。学校によってはアレルギー対応食の提供ルールや、保護者から安全な弁当や代替品を預かる仕組みが整っている場合もあります。
また行事食や特別なおやつを提供する際も、担任から保護者へ事前に確認があるのが一般的です。不明な点はそのままにせず、都度コミュニケーションをとることで誤食リスクを減らせます。
幼稚園・保育園では、おやつの時間や誕生日会などでお菓子を配ることがあります。この際もマカダミアナッツを含むお菓子は厳禁です。
先生方には事前にアレルゲンリストを共有し、持ち込みのお菓子やいただき物のお土産なども含めて、アレルギーのあるこどもが口にしないよう管理してもらいます。
最近はアレルギー対応ケーキやクッキーも市販されていますので、代替のおやつを用意して皆と一緒に食べられるよう配慮する園も増えています。
保護者から見て、不安な場合は代わりに安全なおやつを預けておいたり、行事の際に提供される食品の情報を事前にもらってチェックするなどの工夫をすると良いでしょう。
家庭ではまずマカダミアナッツそのものや含有製品を置かないことが基本です。同居家族が食べる場合も、子どもが間違って口にしないよう厳重に管理してください。兄弟姉妹や祖父母にもアレルギーについて理解してもらい、「少しくらい大丈夫だろう」と安易に与えないよう周知しましょう。実際に、家族や周囲の理解不足がアレルギー児にとって大きなリスクになるケースもあります。料理に木の実類を使用する習慣がある場合は、マカダミアナッツの代替として他の材料(例えば香ばしさを出すためにごまやきなこを使う等)で対応できないか検討します。また、小さいお子さんの場合は誤食防止のため目を離さないことも重要です。テーブル上の他の人のお菓子をつまんでしまった、来客が木の実類入りのお土産を置いていったのを食べてしまった、という事故も起こり得ます。家族だけでなく、親しい友人や預け先(祖父母宅など)にもアレルギー対応について事前にお願いしておきましょう。
以上のような対策を講じ、「食べない」環境づくりに努めることが何よりの予防策です。マカダミアナッツアレルギーのあるこどもが安全に生活できるよう、家庭と学校・園が一丸となって誤食リスクを減らしていきましょう。
マカダミアナッツアレルギーの検査
マカダミアナッツアレルギーの診断において、血液検査のマカダミアナッツ粗抗原特異的IgEおよびマカダミアナッツの7sグロブリンであるMac i 1 特異的IgEの有用性が指摘されています。(参考文献4-6)しかし、日本ではそれぞれ保険診療で測定できません(2026年1月時点)。
そのため、マカダミアナッツアレルギーの診断法のゴールドスタンダートは現時点では食物経口負荷試験になります。
近年では皮膚テスト(スキンプリックテスト)が有用である可能性を示す報告もあります。(参考文献7)https://haremachikodoare.net/article-mnofc/
まとめ
日本で急増するマカダミアナッツアレルギーについて、症状や原因、対策を見てきました。正しい理解と備えがあれば、たとえアレルギーを持つお子さんでも安全に学校や園生活を送り、皆と楽しく過ごすことができます。保護者と先生が二人三脚で、「誤食を防ぐ予防」をしっかり押さえ、こどもを見守っていきましょう。
参考文献:
1 消費者庁. 令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書
2 消費者庁. 【資料1】第6回 食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議
3 宇根岡 慧 , 二瓶 真人 , 秋 はるか , 堀野 智史 , 三浦 克志. リップクリームの使用でアナフィラキシーを呈したマカダミアナッツアレルギー―マカダミアナッツオイルは即時型アレルギー症状の原因となりうる―.皮膚病診療 42巻7号 (2020年):572-575
4 Yasudo H., Ando T., Kitaura J., Maruyama N., Narita M., Natsume O., 他.Predictive value of 7S globulin-specific IgE in Japanese macadamia nut allergy patients.J Allergy Clin Immunol Pract 2022;10:1389-91.e1.
5 Kubota K., Nagakura K. I., Itonaga T., Sato S., Ebisawa M., Yanagida N..Macadamia nut-specific IgE levels for predicting anaphylaxis.Pediatr Allergy Immunol 2022;33:e13852.
6 Ando T., Kitaura J., Maruyama N., Narita M., Miura K., Takasato Y., 他.Sensitization to macadamia 7S globulin amino-terminus with clinical relevance in Japanese children with macadamia nut allergy.Allergol Int 2023;72:351-3.
7 國上 千紘, 今井 孝成, 山下 恒聖, 大川 恵, 高木 俊敬, 本多 愛子, 他.マカダミアナッツ食物経口負荷試験の臨床的特徴に関する検討.アレルギー 2025; 74: 133-138
