猫アレルギーがある人で、豚肉を食べてすぐ蕁麻疹などが出る場合、「豚肉-猫症候群」という交差反応が原因のことがあります。 

豚肉-猫症候群(Pork-cat syndrome)は、猫に対するアレルギー(多くは鼻炎や喘息)が先にあり、その後に豚肉を食べて、多くは数分〜1時間以内に症状が出る食物アレルギーです。 
重い場合はアナフィラキシー(全身の強いアレルギー反応)になることもあります。 

どんな仕組み?

原因は、猫と豚のタンパク質の1種の形がよく似ているために、同じような形のタンパク質を体が取り違える(交差反応)ための起こります。

  • 主役は Fel d 2(猫の血清アルブミン※) へのIgE抗体
  • そのIgEが、豚肉に含まれる Sus s 1(豚の血清アルブミン※) にも反応してしまう(交差反応) 
  • 血清アルブミンは熱に弱いため、一般的には「生・半生、燻製・加工肉」で反応しやすく、加熱で弱まりやすい、とされます。 そのため、加熱の不十分な豚肉や燻製した豚肉(ハムやソーセージ)の摂取で症状が出やすいとされます。
    ただし、よく焼いた肉でも反応した例や、よく加熱した肉で負荷試験中にアナフィラキシーが起きた例もあり、加熱したら絶対安全とまでは断言できませんが、症状が出にくくなる事が一般的です。

※血清アルブミン:動物の体内に広くあるタンパク質。種類が違っても似た構造を持ちます。

α‑Gal症候群との違い(マダニ咬傷から始まる獣肉アレルギー)

  • Pork-cat syndrome:食後すぐ(多くは1時間以内) 
  • α‑Gal症候群:食後3–6時間後に遅れて出やすく、ダニ咬傷が関係することが多い 

こんな症状なら要注意

次のような症状が、豚肉(ときに牛肉など)のあと2時間以内に出現するときに疑います。 

  • 蕁麻疹、赤み、強いかゆみ、唇やまぶたの腫れ
  • 咳、息苦しさ、ゼーゼー
  • 腹痛、下痢、吐き気
  • ぐったり、意識が遠のく、血圧低下(アナフィラキシー)

リスクが高い人

  • 猫の同居・頻繁な接触が数年単位である
  • 猫で鼻炎/喘息が悪化する 
  • アトピー性皮膚炎が強い(皮膚から感作されやすい可能性) 
  • 幼少期から動物曝露が多い

生活の具体的注意点

  • 肉はしっかり焼きましょう
  • 加工肉・燻製・生ハム・ソーセージ:加熱が不十分になりやすく要注意。 
  • 内臓(特に腸:ホルモン/シロなど):加熱してもリスクが残る可能性が示唆されています。 
  • 外食・中食:表示のルールは主に「容器包装品」が対象で、外食は対象外。店員さんに原材料・調理法(焼き加減、混入の可能性)を確認。 
  • 共因子(反応が強くなることがある):運動、飲酒、NSAIDs(痛み止めの一部)、体調不良など。豚肉等を食べた食後しばらくの激しい運動は控えめに。 

緊急対応と受診の目安

緊急時対応

  • 息苦しさ、繰り返す嘔吐、ぐったり、意識異常 → 迷わず救急要請しましょう。
  • アナフィラキシーではアドレナリン筋注が第一選択。自己注射薬(エピペン等)を処方されている人は、指示に従い速やかに使用しましょう。 

受診の目安

  • 「豚肉(または牛肉)を食べて、1時間以内に毎回のように症状が出る」
  • 「猫アレルギーがあり、最近豚肉や牛肉を食べた後に症状が出るようになった」
  • 「特に、焼き加減がレアの肉や、加工肉・内臓で症状が強く出た」

    → 早めにアレルギー専門医に相談しましょう

医療機関で診断のために行う検査等

  • 病歴の整理(食べた量・焼き加減・発症までの時間・共因子) 
  • 皮膚テスト/prick-to-prick(生と加熱の豚肉や牛肉の比較) 
  • 血液検査:豚・猫の特異的IgE、(研究段階の検査として、Fel d 2 / Sus s 1、必要ならα‑Gal) 
  • 必要に応じて食物経口負荷試験

Q&A

Q1. どれくらいで症状が出る?
A. 多くは食後すぐ〜1時間以内。遅いときは別の病態も考えます。 

Q2. 豚肉だけ避ければいい?
A. 交差反応で牛肉などが関与する例もあるため、症状がある食品は医師と整理します。 

Q3. 検査で何を見ればいい?
A. Fel d 2 と Sus s 1(原因タンパク)の確認がポイント。必要に応じてα‑Galも。 

Q4. 外食はどう注意する?
A. 外食は表示義務の対象外。焼き加減・加工肉・内臓・混入を具体的に確認します。 

Q5. エピペン(自己注射)は必要?
A. 呼吸症状や全身症状といった過去の強い反応があれば検討されます。 

Q6. 猫を手放せば必ず治る?
A. 猫への曝露が低減することでIgEが下がる可能性はありますが、現時点では必ず治ると断言できるわけではありません。治療は個別判断になりますので主治医とよく相談しましょう。 

参考文献

  • Allergic cross-reactions between cat and pig serum albumin. Study at the protein and DNA levels. Allergy. 1997 Feb;52(2):179-87.
  • Initial Description of Pork-Cat Syndrome in the United States. J Allergy Clin Immunol. 2013 Jan 23;131(3):923–925.
  • Recurrent urticaria caused by specific cat serum albumin IgE cross-reacting with pork serum albumin. CEP Vol. 63, No. 11, 451–453, 2020
  • Pork-cat syndrome caused by ingestion of beef intestines in an 8-year-old child. Allergology International 70 (2021) 395e397
  • The Role of Molecular Allergens in the Diagnosis of Cat-Pork Syndrome: An Unusual Case Report.Acta Med Port 2022 May;35(5):388-391