乳児期にみられる消化管アレルギー(食物たんぱく誘発胃腸症)は、嘔吐、血便、下痢、体重増加不良などを主症状とし、保護者にとっても医療者にとっても判断に迷いやすい疾患群です。
1. 消化管アレルギーって何?
消化管アレルギー(食物たんぱく誘発胃腸症)とは、
原因となる食べ物を摂取してからしばらくして(数時間〜数日後)、
- 嘔吐(吐き戻し・繰り返す嘔吐)
- 下痢
- 血便
- 体重増加不良
などのお腹の症状や体重が増えない症状が起こる病気です。
※皮膚症状(じんましん)や呼吸器症状(ゼーゼー)といった即時型(IgE依存性)食物アレルギーとは、症状の出方や時間経過が異なります。
日本では、欧米とはやや異なる臨床像や診療文化を背景に、独自の疾患概念・対応の整理が進んできました。
日本では長らく、乳児期にみられる非IgE依存性の消化管症状をまとめて
「新生児・乳児消化管アレルギー」という名称で扱ってきました。
その後、病態理解の進展により、
- 食物たんぱく誘発胃腸炎(Food protein-induced enterocolitis syndrome, FPIES)
- 食物たんぱく誘発直腸結腸炎(Food protein-induced allergic proctocolitis, FPIAP)
- 食物たんぱく誘発性腸症(Food protein-induced enteropathy, FPE)
など、表現型の異なる疾患群として整理されるようになっています。
2021年以降のガイドラインでは、国際的な用語との整合性を意識し、
「新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症(non-IgE-mediated gastrointestinal food allergy [新生児・乳児 Non-IgE-GIFA])」という位置づけが明確に示されました。
一方、今でも消化管アレルギーという名称は、日本ではなじみ深く、患者さんに説明する際等では使われることもいまだ多いと思います。
2. 症状の出方と時間経過
大きく次の2つのグループに分類されます。
● 急性の経過をとるグループ
- このグループには、急性食物たんぱく誘発胃腸炎が含まれます。
- 原因食物を食べてから 1〜4時間程度で
→ 反復する嘔吐が中心 - 元気がなくなる、ぐったりする
- 原因は近年は日本においては鶏卵(特に卵黄)が多い
このタイプは、時間が短い分(とはいえ即時型の症状よりは遅く出ることが多いですが)、食物との関連が疑いやすい側面があります。
● 慢性の経過をとるグループ
- このグループには、嘔吐や慢性的な下痢を呈する慢性食物たんぱく誘発胃腸炎、血便が主な症状である食物たんぱく誘発直腸結腸炎、慢性的な下痢や体重増加不良が主な症状である食物たんぱく誘発腸症が含まれます
- 食物を食べてから 1日〜数日〜数週間後
→ 慢性的な下痢や血便、体重が増えない - 嘔吐や下痢が慢性化し、
原因の食べ物が特定しにくくなることがある
慢性の場合は、食事内容の記録(日誌)などを参考に、食物と症状を比較する必要があります。
3. 診断のポイント:再現性を重視
消化管アレルギーの診断は、次の3点を満たすことで進められます。
- 原因と考えられる食物を除去すると症状が改善する
- 再びその食物を摂取すると、症状が再現する
- 他の疾患(感染症・外科的疾患など)では説明できない
特に「再現性(同じ状況で症状が再び出るか)」を重視して診断していきます。
このため、診断には医療機関での経口食物負荷試験なども含めた評価が必要になることもあります。
IgEが関連する即時型の食物アレルギーと異なり、現時点では保険診療で行うことのできる診断に有用な血液検査等はありません。
4. 管理方針(治療・対応)
● 原因食物の除去
診断がついた場合、原因食物の除去を行います。
- 粉ミルク(乳)が原因の場合
→ 高度加水分解乳、アミノ酸乳など代替栄養に切り替え - 卵やその他の原因の場合
→原因食物をしっかり除去する
原因の除去を続けることで、多くの症状は改善します。
● 即時型アレルギーの薬は効きにくい
抗ヒスタミン薬やエピペン(アドレナリン自己注射薬)など、即時型IgE依存性アレルギーで用いる薬は消化管アレルギーには一般に効果がありません。
消化管アレルギーでは、原因食物の除去と病状に応じた栄養管理が中心になります。
5. 急性FPIESに対する「アクションプラン」
成育医療研究センターでは、急性の経過をとるグループ(急性FPIES)について、
保護者向け・医療者向けのアクションプランを公開しています。
おこさんが誤ってアレルギーの原因食物を食べてしまった場合に、どんな症状に注目したら良いのか、救急車を呼ぶタイミングなどをフロー形式でまとめてあり、活用できるとよいでしょう。
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/gastrointestinal_allergy.html
6. 予後(治る見込み)はどうか?
一般的には幼児期のうちに治ることが多いと報告されています。
診断後は、定期的に食物負荷試験を行い、
👉 原因食物が安全に食べられるか
を確認します。
多くの子どもは、成長とともに「耐性(食べても症状が出ない状態)」を獲得しています。
まとめ
- 消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)は、摂取後数時間〜数日〜数週間後に症状が出る非IgE型のアレルギーです。
- 即時型アレルギーとは異なる対応が必要で、薬物療法ではなく食事管理が中心です。
- 幼児期には多くが耐性を獲得しますが、医師の管理下での評価が重要です。
参考文献
- A Nowak-Węgrzyn,et al.International consensus guidelines for the diagnosis and management of food protein-induced enterocolitis syndrome: Executive summary-Workgroup Report of the Adverse Reactions to Foods Committee, American Academy of Allergy, Asthma & Immunology.J Allergy Clin Immunol.2017;139(4):1111-1126.e4.
- 食物アレルギー診療ガイドライン2021
- 新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症診療ガイドライン(実用版)2019年2月6日改訂
