安全に楽しむために知っておきたいこと
外食は、家族の楽しみのひとつです。
学校園の行事や遠足、習い事の帰り、旅行先など、こどもが外で食事をする機会は少なくありません。
しかし、食物アレルギーのあるこどもにとって、外食は家庭内の食事よりも注意が必要な場面です。
その理由は、「お店の人に聞けば大丈夫」「メニューに書いていなければ入っていない」とは、必ずしも言えないからです。
今回は、論文や公的資料をもとに、
なぜ外食で事故が起こりやすいのか、
どんな点に気をつければよいのか、
学校園の先生が知っておきたいことは何か
を、できるだけわかりやすく整理します。
外食は、なぜ家庭よりリスクが高いの?
家庭では、保護者が原材料を見て、調理器具も管理しやすく、食べ慣れたメニューを出せます。
一方で外食やテイクアウト、中食(お弁当・お惣菜など)では、次のような事情があります。
1.アレルゲン情報の出し方が一定ではない
日本では、包装された加工食品にはアレルゲン表示のルールがありますが、外食や中食は同じような義務の対象ではありません。
そのため、店によって、情報が十分だったり不十分だったりします。
2.同じメニューでも中身が変わることがある
同じ料理名でも、仕入れ先や季節、店舗によって、使う食材や調味料が変わることがあります。
昨日は大丈夫でも、今日は違う材料が入っていることがあります。これは家庭の食事よりも変動が大きい点です。
3.調理中の「意図しない混入」が起こりうる
たとえば、同じフライヤーで揚げる、同じトングを使う、粉が飛ぶ、同じまな板や鍋を使う、などです。
このようなコンタミネーションは、外食で特に重要な問題です。
4.伝えたつもりでも、現場で情報が途切れることがある
注文時に伝えても、ホールスタッフから厨房へ十分に伝わらないことがあります。
また、忙しい時間帯や慣れていないスタッフでは、確認が不十分になることもあります。
実際に、外食でアレルギー症状は起きているの?
米国の患者レジストリ解析では、外食はアレルギー反応が起きる主要な場所のひとつであり、しかも軽い症状だけではなく、約4分の1でアドレナリン投与が必要だったことが示されています。複数回投与が必要な例もありました。(参考文献9)
日本のデータとしては、事業者側調査から「ヒヤリハット/誤食事故が一定割合で発生」「医療機関受診を
要する例がある」ことが報告されています。(参考文献6) さらに、全国規模の事業者アンケートでは、店内または事
業所内で食物アレルギー症状が起きた経験を持つ事業者が一定数存在し、対応は「口頭回答」中心で、専用
チェックシートの運用は限定的でした。(参考文献7)
これらからわかる大切なことは、事故の理由が単なる「伝え忘れ」だけではないことです。
研究では、スタッフにアレルギーを伝えていたのに反応が起きた例もありました。
つまり、事故は
- 交差汚染
- 隠れた原材料
- 店内の情報伝達ミス
- 原材料変更や確認不足
など、いくつもの要因が重なって起きると考えられます。
「入っていなければ大丈夫」ではなく、「混ざっていないか」も大事です
食物アレルギーでは、料理名だけ見ても安心できないことがあります。
たとえば、食べてはいけない食品が主材料として見えなくても、
- ソース
- だし
- ドレッシング
- 加工調味料
- 練り製品
- デザートのトッピング
- 代替材料
のように、見えにくい形で入っていることがあります。
「入っていますか?」だけでなく、見えない形のアレルゲンまで踏み込むことが大切です。
特に注意したい外食の場面
次のような場面は、コンタミネーションや確認漏れが起こりやすく、特に注意が必要です。
揚げ物
同じ油で複数の食品を揚げていると、アレルゲンが混ざる可能性があります。
たとえば、小麦や卵、乳を使った衣が同じフライヤーで扱われることがあります。
麺類
同じゆで釜を使っていると、そばや小麦などの混入が問題になることがあります。
そばアレルギーの方が「そばは入っていない」と確認して注文した冷麺でアナフィラキシーを起こし、検査でそば成分が検出された国内事例もあり、外食での確認の難しさを示す例です。(参考文献8)
粉もの・ベーカリー・デザート
粉の飛散や共有器具、トッピングの混入、見えない乳・卵・ナッツの使用に注意が必要です。
テイクアウト・デリバリー
店内飲食だけでなく、持ち帰りや配達でも反応は起こりえます。
注文時の情報と、受け取った商品の内容がずれていないか、注文前と受け取り時の二段階確認が勧められています。
外食前に、家族が整理しておきたいこと
外食を安全にする第一歩は、お子さん自身のリスクを言葉にできることです。
- 何の食物で症状が出るか
- 微量でも反応するか
- これまでにアナフィラキシーを起こしたことがあるか
- 喘息があるか
- 加熱で食べられるか、未加熱ではだめか
- 体調や運動で悪化しやすいか
こうした情報が整理できていると、お店に具体的に伝えやすくなります。
外食で必ず確認したいポイント
外食時には、次のような点を確認するのが実践的です。
1.口頭だけにしない
伝達手段を標準化することが必要です。
コミュニケーションシートを見せる、書いて伝える、復唱してもらう、といった方法が有効です。
2.「入っていますか」だけで終わらない
以下のような工程も確認します。
- 同じフライヤーを使うか
- 同じゆで釜を使うか
- 同じ鉄板やトングを使うか
- 粉が飛ぶ環境か
- ソース、だし、ドレッシングに含まれないか
3.曖昧なら食べない
「たぶん大丈夫です」「詳しくはわかりません」という場合は、無理をせず、“曖昧なら撤退”する勇気を持つ事が必要です。
学校園の先生に知っておいてほしいこと
校外学習、遠足、宿泊行事、発表会後の会食など、学校園でも外食や持ち帰り食を利用する場面があります。
そのときに大切なのは、「本人・家族が伝えた内容を、そのまま確実に相手へつなぐこと」です。
先生方に意識していただきたい点は次の通りです。
1.「除去食対応あり」と書いてあっても、それだけで安心しない
店舗によっては、対応できる範囲が限られます。
完全除去なのか、原材料対応だけなのか、交差汚染までは防げないのか、そこを確認する必要があります。
2.保護者任せにしすぎない
もちろん保護者の情報は重要ですが、学校園行事では、最終的にその場で児を見守る大人が情報を共有していることが重要です。
誰が確認し、誰が緊急時対応を行うかを事前に決めておくと安全です。
3.緊急時対応を事前に確認する
外食での反応は重症化しうるため、
- エピネフリン自己注射薬を持っているか
- どの症状で使うか
- 使用後は救急要請・受診が必要であること
を、引率者が把握しておくことが大切です。
症状が出たらどうする?
外食では、十分注意していても予期せぬ曝露が起こることがあります。
そのため、「事故をゼロにする」だけでなく、「起きたときにすぐ動ける」ことも同じくらい重要です。
したがって、アドレナリン自己投与デバイスを処方されているこどもでは、
- アドレナリン自己投与デバイスを携行する
- 使うべき症状を理解しておく
- ためらわずに使えるようにしておく
- アドレナリン自己投与デバイスが手元にない場合は躊躇わずに救急要請する
ことが大切です。
家族向け:外食前チェックリスト
外食の前に、次を確認してみてください。
- 原因食物を整理している
- 微量でも反応するか把握している
- アナフィラキシーの既往や喘息の有無を把握している
- お店への伝え方を決めている
- コンタミネーションへの質問項目を準備している
- 緊急薬を持っている
- ソース、だし、加工調味料まで確認する
- 「曖昧なら食べない」を家族のルールにする
テイクアウト・デリバリーでは
- 注文時に確認
- 受け取り時にもラベルや内容物を再確認
学校園向け:行事で外食を伴うときの確認ポイント
- 事前に保護者と原因食物・重症度を共有する
- 店舗へ、除去だけでなくコンタミネーション対応の可否を確認する
- 連絡した内容を書面でも残す
- 当日引率する職員が情報を把握している
- 緊急薬の所在と使い方を確認する
- 対応が曖昧なら代替食や持参食を検討する
学校園の行事では、「食べられるメニューを探す」ことより、安全が確認できる形で参加できることを優先するのが現実的です。
まとめ
食物アレルギーのあるこどもにとって、外食は「絶対にしてはいけないもの」ではありません。
ただし、家庭の食事と同じ感覚では安全を守れない場面があります。
外食で大切なのは、
- 情報をうのみにしない
- 口頭だけで済ませない
- コンタミネーションまで確認する
- 曖昧なら食べない
- 緊急対応の準備をしておく
ということです。
保護者、本人、学校園、お店のそれぞれが「できること」を積み重ねることで、外食の安全性は高められます。
楽しい食事の時間を守るために、事前確認と備えを大切にしていきましょう。
参考文献
- 消費者庁. 外食・中食を利用するときに気をつけること(消費者向けパンフレット).
- 消費者庁. 外食等におけるアレルゲン情報の提供の在り方検討会中間報告.
- 外食等におけるアレルゲン情報推進検討会. 外食・中食におけるアレルゲン情報の提供に向けた手引き.
- 日本アレルギー学会関連. 食物アレルギー診療の手引き2023.
- 消費者庁. 即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査(令和3年度事業報告書内)
- 國上千紘ほか. 外食事業者における食物アレルギー対応の実態.
- 消費者庁. 外食・中食における食物アレルギーに関する情報提供の取組に係る実態調査業務.
- 石川県保健環境センター報告. 「そば」による食物アレルギー発症事例.
- Oriel RC, et al. Characteristics of Food Allergic Reactions in United States Restaurants.
