いざという時に困らないために、家庭でできる備え

地震、豪雨、台風、大雪などの災害は、いつ起こるかわかりません。
災害時には、食べ物や薬が手に入りにくくなったり、避難所で普段と違う生活を送ったりしなければならないかもしれません。

食物アレルギーのあるこどもにとって、災害時に特に心配なのは、
「安全に食べられるものがあるか」
「誤食を防げるか」
「症状が出た時に対応できるか」
という点です。

ただし、すべてを家庭だけで完璧に準備する必要はありません。日本小児アレルギー学会やアレルギーポータルなどから、災害時の対応に役立つ資料が公開されています。この記事では、そうした信頼できる資料も紹介しながら、食物アレルギーのあるこどもが災害に備えるために、家庭でできることをまとめます。


信頼できる資料

災害対策については、すでに学会や公的機関がわかりやすい資料を作成しています。
この記事だけで完結させるのではなく、以下の資料もぜひ確認しておくことをおすすめします。

日本小児アレルギー学会「災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレット」

日本小児アレルギー学会は、災害時にアレルギー疾患をもつこどもを支援するために、「災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレット」やポスターを公開しています。食物アレルギーだけでなく、ぜんそく、アトピー性皮膚炎などをもつこどもへの対応もまとめられています。

このパンフレットは、保護者だけでなく、避難所のスタッフ、学校・園、行政関係者にも役立つ内容です。災害時に手元で確認できるよう、事前にスマートフォンに保存したり、印刷して非常用持ち出し袋に入れておくと安心です。

アレルギーポータル「災害時の対応」

アレルギーポータルには、災害時のアレルギー疾患への対応方法、避難所での生活上の注意点、支援者向けの資料などがまとめられています。患者さん向け、行政向け、医療者向けの資料が整理されており、Q&A形式の資料や、平時の備えに関するパンフレットも掲載されています。

特に、食物アレルギーのある家庭では、「アレルギー疾患のための災害への備えと対応」「お薬・水・食料備蓄できていますか?」「そなえるブック」などが参考になります。

東京都アレルギー情報navi「災害時対策」

東京都アレルギー情報naviでも、災害時のアレルギー対策に関する情報がまとめられています。日本小児アレルギー学会のパンフレットや、自治体向けのアレルギー用食品備蓄に関する提案などへのリンクも整理されています。


食物アレルギー児の災害対策で大切なこと

食物アレルギーの災害対策で大切なのは、次の4つです。

  1. 安全に食べられる食品を備えておく
  2. アレルギーがあることを周囲に伝えられるようにする
  3. 症状が出た時の薬と対応を準備する
  4. 学校・園・避難所・行政とつながれるようにしておく

順番に見ていきます。


1. 安全に食べられる食品を備えておく

災害時は、普段使っている食品が手に入らないことがあります。
避難所で配られる食品や支援物資は、すぐに原材料を確認できない場合もあります。

そのため、食物アレルギーのあるこどもでは、「その子が確実に食べられる食品」を家庭で備えておくことがとても大切です。

目安としては、少なくとも数日分、可能であれば1週間程度を意識して、家庭で食べ慣れている食品を備えておくと安心です。

具体的には、次のようなものです。

  • アレルゲンを含まないレトルト食品
  • アレルギー対応のアルファ化米
  • 食べ慣れている缶詰
  • アレルギー対応のお菓子
  • 飲料水
  • 乳幼児では、普段使っているミルクやアレルギー用ミルク
  • 経口補水液やゼリー飲料など、本人が摂取できるもの

災害用食品は、買ったまま保管して終わりではなく、普段から食べてみて、本人が食べられるか・味を嫌がらないかを確認しておくことが大切です。


ローリングストックがおすすめです

災害用の食品は、非常用としてしまい込むと、気づいた時に期限切れになっていることがあります。

おすすめは、ローリングストックです。
これは、普段から少し多めに食品を買っておき、使った分を買い足す方法です。

食物アレルギーのあるこどもでは、「いざという時に食べられるもの」が限られることがあります。だからこそ、普段から食べ慣れた安全な食品を少し多めに置いておくことが、現実的な災害対策になります。

アレルギーポータルでも、平時の備えとして、治療薬やアレルギー対応食品の備蓄に関する資料が紹介されています。


2. アレルギーがあることを周囲に伝えられるようにする

災害時は、いつも子どものことをよく知っている人だけが周りにいるとは限りません。
避難所のスタッフ、ボランティア、近隣の人、親戚など、普段は関わりの少ない人から食べ物を渡されることもあります。

そのため、食物アレルギーがあることを、本人や保護者が説明できない状況でも伝わるようにしておくことが大切です。

準備しておきたい情報は、次のようなものです。

  • 食べられない食品
  • 食べるとどのような症状が出るか
  • アナフィラキシー歴の有無
  • エピペン®を持っているか
  • 内服薬の内容
  • 主治医・医療機関
  • 保護者の連絡先
  • 学校・園での対応内容

これらを紙にまとめて、母子手帳、保険証、お薬手帳、非常用持ち出し袋と一緒に入れておくとよいです。

小さいこどもでは、自分で正確に説明できないことがあります。
「〇〇アレルギーがあります」「〇〇は食べられません」と書いたカード、シール、キーホルダーなどを使うのも一つの方法です。

アレルギーポータルでは、避難所にいる周囲の方にアレルギー疾患があることを伝えるための「アレルギーゼッケン」も紹介されています。


3. 薬と緊急時対応を準備しておく

食物アレルギーの災害対策では、食品だけでなく薬の準備も重要です。

特に、アナフィラキシーの既往があり、エピペン®を処方されている場合は、災害時にもすぐ使えるようにしておく必要があります。

確認しておきたいことは、次の通りです。

  • エピペン®の使用期限
  • エピペン®の保管場所
  • 家族が使い方を理解しているか
  • 学校・園でも対応が共有されているか
  • 抗ヒスタミン薬などの内服薬の残量
  • お薬手帳や薬剤情報のコピー

災害時には、医療機関をすぐ受診できない可能性があります。
そのため、「どの症状が出たら薬を使うか」「どの症状なら救急要請が必要か」を、平時より主治医と確認しておくことが大切です。

また、薬は期限切れや紛失が起こりやすいため、定期的に確認しましょう。


4. 避難所で注意したいこと

避難所では、食物アレルギーのあるこどもにとって、いくつかのリスクがあります。

例えば、

  • 配布食品の原材料が確認しにくい
  • 炊き出しの材料がわからない
  • 周囲の人からお菓子をもらう
  • 「少しくらいなら大丈夫」と誤解される
  • 食べられるものが少なく、栄養が偏る
  • 不安や遠慮で、保護者が相談しにくい

などです。

避難所では、まず受付や担当者に、食物アレルギーがあることを伝えましょう。
「卵アレルギーです」「乳製品は食べられません」だけでなく、可能であれば「アナフィラキシーを起こしたことがあります」「エピペン®を持っています」など、重症度も伝えると対応につながりやすくなります。

避難所では遠慮してしまうこともあるかもしれませんが、食物アレルギーは命に関わることがあります。必要な配慮は、わがままではありません。


こども本人にも、年齢に応じて伝えておく

小学生以上であれば、こども本人にも、災害時の注意点を少しずつ伝えておくことが大切です。

例えば、

  • 知らない人からもらった食べ物は、すぐに食べない
  • 食べる前に大人に確認する
  • 体がかゆい、苦しい、気持ち悪い時はすぐ言う
  • 自分のアレルギー名を言えるようにする
  • エピペン®や薬がどこにあるか知っておく

といった内容です。

ただし、怖がらせすぎる必要はありません。
「あなたを守るための準備だよ」「困ったら大人に言えばいいよ」と、安心感とセットで伝えることが大切です。


学校・園とも災害時対応を確認しておく

災害は、家庭にいる時だけに起こるとは限りません。
学校、保育園、幼稚園、習い事、外出先で起こる可能性もあります。

そのため、学校や園とも、次の点を確認しておくと安心です。

  • 災害時の備蓄食品に、本人が食べられるものがあるか
  • 食物アレルギー児用の個別備蓄が可能か
  • エピペン®や薬の保管場所
  • 災害時に誰が薬を持ち出すか
  • 保護者と連絡が取れない場合の対応
  • 給食・おやつ・非常食の原材料確認方法

学校や園では、生活管理指導表などを通じて、普段の対応は共有されていることが多いと思います。
しかし、災害時の対応まで具体的に確認されているとは限りません。

年度初めや面談時に、「災害時の食物アレルギー対応」についても一度確認しておくとよいでしょう。


家庭で準備しておきたいチェックリスト

以下は、家庭で確認しておきたい項目です。

食品

□ 本人が確実に食べられる非常食がある
□ 数日分の食品と水を用意している
□ 普段から食べたことがある食品を備えている
□ 賞味期限を定期的に確認している
□ アレルギー用ミルクが必要な場合、予備を準備している

□ エピペン®の期限を確認している
□ 内服薬の予備がある
□ お薬手帳や薬剤情報のコピーがある
□ 緊急時の薬の使い方を家族が知っている

情報

□ 食べられない食品をまとめたカードがある
□ 主治医・医療機関・保護者連絡先を書いている
□ アナフィラキシー歴を説明できる
□ 学校・園と災害時対応を確認している

避難

□ 非常用持ち出し袋にアレルギー対応食品を入れている
□ 避難所でアレルギーがあることを伝える方法を考えている
□ 子ども本人が「食べる前に確認する」ことを理解している


支援する側に知っておいてほしいこと

この記事を読んでいる方の中には、学校・園の先生、行政関係者、避難所運営に関わる方もいるかもしれません。

食物アレルギーのあるこどもへの災害時支援では、次の点が重要です。

  • 食物アレルギーは命に関わることがある
  • 「少しなら大丈夫」とは限らない
  • 原材料が確認できない食品は、本人にとって食べられないことがある
  • アレルギー対応食品は、必要な人に届く仕組みが大切
  • 本人や保護者が申し出やすい雰囲気をつくる
  • 避難所では、掲示物や受付時の確認が役立つ

日本小児アレルギー学会のポスターやパンフレットは、避難所や学校での掲示にも使いやすい資料です。災害が起こってから探すのではなく、平時から関係者で共有しておくことが大切です。


まとめ

食物アレルギーのあるこどもの災害対策では、「食べられるものを備える」「アレルギーがあることを伝える」「薬と緊急時対応を確認する」「学校・園・避難所とつながる」ことが大切です。

災害時は、普段通りにいかないことがたくさんあります。だからこそ、平時の小さな準備が、いざという時の安心につながります。

すべてを一度に完璧に準備する必要はありません。まずは、本人が食べられる食品を少し多めに備えること、薬の期限を確認すること、アレルギー情報を書いたカードを作ることから始めてみてください。

そして、困った時に頼れる資料として、日本小児アレルギー学会やアレルギーポータルの災害時対応ページを、ぜひ一度確認しておきましょう。