1. アナフィラキシーとは

アナフィラキシーは、アレルゲン(食べ物、薬、虫刺されなど)により、短時間(数分〜数十分)で全身に急速に症状が広がる強いアレルギー反応です。症状は皮膚だけでなく、呼吸、消化器、循環(血圧)、意識など多岐にわたります。(参考文献1)

特に、血圧低下や意識障害などを伴う「アナフィラキシーショック」は生命に関わる状態で、初期症状から短時間で重症化することがあります
食物による致死的アナフィラキシーでは、発現から呼吸停止/心停止までの時間の中央値が30分(範囲4〜120分)と報告されています。(参考文献2)


2. もっとも重要な原則:迷ったら「アドレナリン(エピペン)+救急要請」

アナフィラキシーの急性期治療で、第一選択(最優先)で有効性が確立しているのはアドレナリンの筋肉注射です。抗ヒスタミン薬やステロイドは補助的治療であり、アドレナリンの代わりにはなりません

アナフィラキシーは病院外で起こることが多く、現場での初期対応が予後に影響します。WAO(世界アレルギー機構)も、アドレナリン筋注が第一選択であることを強調しています。(参考文献3)


3. エピペンは誰が打てる?

エピペンは原則として処方された本人が使用する薬ですが、小児で本人が打てない状況では、保護者や教職員(保育士等)が代わって注射することが想定され、一定の条件下で医師法違反に当たらないと示されています。


4. エピペンを打つタイミング(「1つでも当てはまれば」)

エピペンの使用目安は、「皮膚症状だけ」か「全身症状(呼吸・循環・強い消化器など)が出ているか」で判断します。現場向けのマニュアルでは、“迷ったらエピペン”を明確に掲げ、5分以内に判断することが推奨されています。(参考文献4)

1つでもあれば、エピペンを考える症状

全身の症状

  • ぐったり、意識もうろう
  • 尿や便を漏らす
  • 脈が触れにくい/不規則
  • 唇や爪が青白い(チアノーゼ)

呼吸器の症状

  • のどや胸が締め付けられる、声がかすれる
  • 犬が吠えるような咳
  • 持続する強い咳き込み
  • ゼーゼーする呼吸
  • 息がしにくい

消化器の症状

  • 繰り返し吐き続ける
  • 持続する強い(がまんできない)腹痛

ポイント:「打つべきか迷う」こと自体が危険サインになり得ます。現場では「迷ったら打つ」が安全な判断です。


5. 症状出現時の対応の手順

東京都の緊急時対応マニュアル(参考文献5)は、症状出現時に以下を示しています。

  1. ただちにエピペンを使用(または介助)
  2. 119番通報(「アナフィラキシー疑い」「エピペン使用(予定)」を伝える)
  3. その場で安静(立たせない・歩かせない)
  4. 体位を整える(下記参照)
  5. 救急隊を待つ(症状と時刻を記録)

体位の目安(嘔吐や呼吸状態に応じて)

  • ぐったり/意識もうろう:仰向け+足を高く
  • 吐き気・嘔吐:体と顔を横に(窒息予防)
  • 呼吸が苦しく仰向けがつらい:上半身を起こす

6. エピペンの打ち方(超重要)

エピペンの基本は「太ももの前外側(外側の筋肉)」です。ポケットのある場所と覚えておくと良いでしょう。緊急時は服の上からでも注射可能です。

チェックリスト

  • ① 利き手でしっかり握る(オレンジ側を下)(親指はかけないで握りこむように持つ!)
  • ② 反対の手で青い安全キャップをまっすぐ外す
  • ③ 太ももの前外側に垂直に当てる(衣服の上ならポケットの中身を出す)
  • ④ 「カチッ」と音がするまで強く押し当て、短くとも早口で5秒数えている間は押し当て続ける
  • ⑤ 注射後、オレンジのニードルカバーが伸びていることを確認
  • ⑥ 使用済みエピペンはケースに戻し、医療機関へ持参

※本人以外が投与する場合、足が動かないように固定することも重要です。

エピペンの打ち方はhttp://www.epipen.jp/top.htmlに詳述されています。


7. エピペンを打った後に必ずすること

  • 必ず救急要請し、医療機関で評価を受ける(エピペンは「医師の治療までの間、症状進行を一時的に緩和しショックを防ぐ補助治療」という位置づけです)
  • 時刻を記録(症状開始、エピペン使用時刻、追加投与の有無など)
  • 改善しない場合の次の一手:10〜15分後に改善がみられない場合、2本目があれば追加使用を検討

8. 「練習」が安全を作る

エピペンは手技自体は難しくありませんが、実際の現場では混乱します。トレーナーで日頃から繰り返し練習することが大切です。

学校(園)としては、

  • 役割分担(リーダー/119通報/エピペン準備/AED準備/記録 など)
  • エピペン保管場所と持ち出し導線
  • シミュレーション研修(年1回以上)
    を定型化しておくと、事故時の初動が安定します。

まとめ(ここだけ覚える)

  • アナフィラキシーは数分〜数十分で重症化し得る全身反応
  • 急性期の第一選択はアドレナリン筋注(エピペン)。内服薬だけで様子見は危険。
  • 迷ったらエピペン+救急要請。立たせず、その場で安静・体位管理。
  • エピペン後も必ず医療機関へ。10〜15分で改善がなければ2本目を検討。

<参考文献>
(1) 一般社団法人 日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン2022.
(2) Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000;30:1144-50
(3) Cardona V, et al. World Allergy Organization Anaphylaxis Guidance 2020. World Allergy Organ J. 2020.
(4) 日本小児アレルギー学会. When to Inject Epinephrine(一般向けエピペン®の適応)
(5) 東京都保健医療局(東京都アレルギー疾患対策検討委員会監修). 食物アレルギー緊急時対応マニュアル