はじめに

気管支喘息やアトピー性皮膚炎があるお子さんにとって、予防接種(ワクチン)で感染症を予防することはとても大切です。特に気管支喘息ではインフルエンザなどの感染症をきっかけに、発作が悪化したり重症化する可能性があります。

一方で、気管支喘息やアトピー性皮膚炎そのものは、予防接種の禁忌(受けてはいけない理由)ではありません。
原則として、年齢に応じた定期接種・任意接種を、基本スケジュール通り受けることが推奨されます。

このページでは、保護者の方が迷いやすいポイントを中心に、
ワクチンの種類(生ワクチン/不活化ワクチン)・副反応・接種スケジュール・免疫抑制する治療中の考え方・接種後の観察BCG接種部位のステロイド外用役の考え方を整理して解説します。


1. ワクチンの種類別の注意点

生ワクチン(弱毒生ワクチン)で注意すること

生ワクチンは、免疫機能が低下している場合に感染症を引き起こすリスクがあるため、気管支喘息やアトピー性皮膚炎のあるこどもでは免疫抑制状態にあるときは慎重な判断が必要になります。下に該当する場合は主治医と相談しながら接種計画を立てると良いでしょう。

生ワクチンの例

MR(麻疹・風疹)、水痘、おたふくかぜ(ムンプス)、ロタ、BCG 、経鼻生インフルエンザワクチン(商品名:フルミスト)

免疫抑制状態がある場合

次のような状況では、生ワクチンを一時見合わせたり、接種時期を調整します。その際の考え方は、下で詳しく説明します。

  • 重症気管支喘息があって、長期・高用量のステロイド薬の内服や注射をしている
  • アトピー性皮膚炎で、免疫抑制薬の内服中
  • 重症気管支喘息もしくは重症アトピー性皮膚炎で生物学的製剤JAK阻害薬を開始する予定がある、もしくは使用中(例:デュピルマブ(商品名:デュピクセント)や ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)など)

気管支喘息のあるこどもでの注意点:経鼻生インフルエンザワクチン

経鼻生インフルエンザワクチン(商品名:フルミスト)は、気管支喘息のあるお子さんでは気道症状悪化の懸念があり、
ステロイド内服や生物学的製剤の有無を問わず、日本では一般に注射の不活化インフルエンザワクチンが推奨されます。


不活化ワクチンは基本的に安全

不活化ワクチンは、病原体そのものではないため、
気管支喘息やアトピー性皮膚炎があっても基本的に安全に接種できます。

不活化ワクチンの例

四種混合/五種混合、Hib、肺炎球菌、B型肝炎、日本脳炎、子宮頸がんワクチン、不活化インフルエンザ(注射)、新型コロナワクチンなどなど多数

免疫抑制をする治療中でも接種できることが多い

免疫抑制をする治療中でも、不活化ワクチンは治療を中断せず接種できるのが一般的です。

ただし、免疫が抑えられていると 「ワクチンの効き(抗体のつき方)が弱くなる」可能性があります。
必要に応じて、接種後の抗体確認や追加接種を検討することがあります。

気管支喘息のこどもと免疫抑制をする治療をしているこどもでは特に大事:インフルエンザ

感染症を防ぐことで、結果的に喘息の悪化を減らす効果が期待できます。
例えば、インフルエンザ不活化ワクチンは気管支喘息のあるこどもでは毎年積極的に接種すべきであり、接種によってインフルエンザ感染とそれに伴う喘息発作・入院リスクを減らせることが示されています。

また、アトピー性皮膚炎で免疫抑制をする治療を受けていたり、生物学的製剤を使用している場合は、インフルエンザ感染時に重症化のリスクがありますので、気管支喘息と同様に積極的に予防接種を受けることが望ましいでしょう。


2. 副反応は増える?―安全性の考え方

「アレルギー体質だから副反応が怖い」は誤解が多い

気管支喘息やアトピー性皮膚炎があることで、ワクチンの重い副反応が著しく増えるという根拠はありません。

接種当日の流れ

  • 事前に、過去の副反応歴・食物/薬剤/ゼラチンをはじめとする添加物等のアレルギー歴を確認
  • 接種後は通常15分の経過観察
  • 気管支喘息の状態が不安定・アナフィラキシー既往がある等の場合は、30分程度は院内で観察することが多い

ワクチンに含まれる成分へのアレルギーがある場合

  • 鶏卵アレルギーがあっても、不活化インフルエンザワクチンは通常接種できます(含有量は極めて微量)。
  • ワクチンに含まれる特定成分でアレルギーの既往歴がある場合は、代替ワクチンの検討や前処置によって接種できるケースがあります。主治医と事前に相談してください。

よくある反応/受診の目安

よくある正常反応(多くは自然に軽快)

  • 接種部位の赤み・腫れ
  • 24時間以内の軽い発熱、だるさ

受診を考えるサイン

  • 呼吸が苦しい、ゼーゼーが急に出た
  • 全身のじんましんが広がる
  • 高熱が2日以上続く、ぐったりしている
  • 接種部位が強く腫れて熱を持ち悪化する

3. 接種スケジュール:遅らせないのが基本

基本方針

気管支喘息やアトピー性皮膚炎があっても、スケジュールは原則通常通りに行いましょう。

延期を検討する場面

  • 気管支喘息発作中、コントロール不良
  • 皮膚炎の急激な増悪期(強い炎症・掻破が多いなど)
  • 明らかな体調不良(高熱など)

軽い鼻かぜ程度で元気がある場合は、接種できることも多いので、迷うときは主治医に相談してください。

季節性ワクチン(インフルエンザなど)

流行前に間に合うように、秋〜初冬に計画するのが基本です(効果が出るまで時間がかかるため)。


4. 免疫抑制療法中(経口ステロイド内服中・生物学的製剤・JAK阻害薬など)の考え方

原則

  • 不活化ワクチン:多くは治療中でも接種OK
  • 生ワクチン:原則避ける/開始前に済ませる計画が重要投与中であれば主治医と接種スケジュール相談

経口ステロイド(プレドニゾロン等)内服中

  • 短期・低用量あれば問題なく通常のスケジュール通り接種できます
  • 高用量を2週間以上(2mg/kg/日以上または20mg/日以上を2週間超える)ような、免疫抑制が強い状況では
    生ワクチンは経口ステロイド内服や点滴終了後しばらく間隔(目安1か月)を空けて接種を検討します
  • 吸入ステロイドやステロイド外用薬などのステロイドによる局所治療は、通常ワクチンに影響しません

デュピルマブ等の生物学的製剤・JAK阻害薬

  • 不活化ワクチンは基本的に予定通り接種
  • 生ワクチンは可能なら開始前に接種
  • 明確な禁忌とは言えないものの、各製剤の添付文書上は慎重投与の扱いになっていることもあり、安全性の観点から可能なら治療開始前または一定の休薬期間を設けて接種することが多いです。必要になった場合は個別の判断になりますので、主治医と相談しましょう

こどもの生ワクチンは一般的な接種スケジュールでは、2か月3か月(4か月)で内服する経口ロタワクチン、5か月以降で接種するBCG、1歳になったら接種する麻疹風疹・水痘・ムンプス、1歳半の水痘追加接種、その後は年長(5-6歳)で接種する麻疹風疹・ムンプスの追加接種になります。
6歳より前に投与可能な生物学的製剤はアトピー性皮膚炎に使うデュピルマブ(商品名:デュピクセント)のみになりますので(2026年2月時点)、1歳前後または年長(5ー6歳)前後でデュピルマブを使用しているまたは開始する可能性がある方は接種スケジュールを主治医と相談してください。

そのため、スケジュール通りに予防接種を進めている小学生以上のお子さんが生物学的製剤等を導入する際は問題にならない(打つべき生ワクチンの接種は接種が済んでいる)ことが多いです。不安があれば、導入前に予防接種の接種状況を小児科で確認してもらいましょう。


5. 接種後の観察と家庭でのケア

接種直後(院内)

  • 30分程度の観察が勧められることがあります(喘息が不安定、アナフィラキシー歴など)

当日〜数日

  • 激しい運動・長風呂は控えめに、いつもより休息を
  • 皮膚は普段通りの保湿・外用を続けてOK(接種部位は強くこすらない)
  • 発熱時は水分をしっかり、必要なら解熱剤を使用

6. BCG接種部位のステロイド外用薬の考え方

アトピー性皮膚炎のお子さんのBCG接種後に迷いやすいポイントです。

BCG接種部位への外用薬(ステロイド等)

  • BCG接種予定部位(上腕)のステロイド外用は接種前日まで
  • 接種後しばらくは、局所反応が落ち着くまで接種部位への外用は控える

ジファミラスト(商品名:モイゼルト)なども、接種部位への塗布は同様に控える運用が推奨されることがありますので主治医に確認しましょう。

実際の運用

  • 事前に、接種予定部位の湿疹が落ち着いているか確認
  • 片腕が荒れていれば反対側を検討
  • 両腕とも湿疹の活動性が強いなら、一時延期や治療の強化を主治医と相談しましょう

おわりに

喘息やアトピー性皮膚炎があるお子さんでも、適切な管理のもとで予防接種は基本的に安全に受けられます。
むしろ基礎疾患があるからこそ、感染症を防ぐメリットは大きくなります。不安があるときは、遠慮なく主治医に相談しながら、計画的に進めていきましょう。

参考文献

  1. 免疫不全状態にある患者に対する予防接種ガイドライン2024. 日本小児感染症学会.
  2. Recommendations for Vaccination in Children with Atopic Dermatitis Treated with Dupilumab: A Consensus Meeting, 2020. Am J Clin Dermatol. 2021 Jun 2;22(4):443–455. 
  3. 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方~医療機関の皆様へ~.日本小児科学会ホームページ.(2026/2/1参照)
  4. 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2021. 日本小児アレルギー学会.