マカダミアナッツ食物経口負荷試験の臨床的特徴に関する検討.アレルギー.2025;74(3):133–138.

マカダミアナッツは、クッキーやチョコレートなどに使用され、日本でも身近な木の実になりました。近年は即時型の症例報告も増え、2024年からは食品表示法の「特定原材料に準ずるもの(推奨品目)」にも位置付けられています。

一方で、「マカダミアナッツアレルギー」を診断する際の“ゴールドスタンダード”である食物経口負荷試験(OFC)については、これまで安全性や臨床像のまとまった報告が乏しいのが現状でした。

そこで本記事では、私が筆頭著者として執筆したマカダミアナッツOFC 66件の後方視的検討の結果を、保護者・学校関係者の方にも伝わるように要点を紹介します。


1. 研究の目的:日本の小児マカダミアナッツOFCの「実態」を明らかにする

本研究は、昭和大学病院小児科で2013年1月〜2024年6月に実施したマカダミアナッツOFCを集計し、結果と患者背景、スキンプリックテスト(SPT)との関連を評価した後方視的研究です。


2. 対象と方法:1g(約1/2個)と10g(約5個)のOFC

  • 対象:マカダミアナッツOFC のべ66件(51人)
  • 目標量:1g(33件)と10g(33件)
  • 実施法:総負荷量の1/3→(40分観察)→2/3の不均等2分割法(オープン法)
  • 判定:食物アレルギー診療ガイドラインに準拠し、重症度グレード2以上を陽性としました。

3. 主要結果:OFC陽性率と「アナフィラキシー誘発率」

3-1)陽性率

  • 1g OFC:27%
  • 10g OFC:12%

3-2)陽性者のうち「アナフィラキシーを呈した割合」

  • 1g陽性者:52%がアナフィラキシー
  • 10g陽性者:3%がアナフィラキシー

ここが本研究の最重要ポイントです。“1g(約1/2個)”という少量でも、陽性者ではアナフィラキシーが一定割合で起こり得ることが示されました。


4. 「時間」と「量」の情報

  • 1g陽性者の78%が、総負荷量の1/3摂取で症状が誘発されました。
  • 初回摂取から症状出現までの中央値は
    • 1g:12分[4–20分]
    • 10g:38分[32–51分]

学校・園の現場で役立つように言い換えると、「食べてすぐ〜20分程度で症状が出る」こともあり得る、ということです。OFCは医療機関で行う検査ですが、多くの場合反応がどれくらいで出るのかを知っておくことは、誤食時の初動にもつながります。


5. どんな症状が多い?(臓器別の特徴)

OFC陽性者で多かった誘発症状は、

  • 呼吸器症状:68%(最多)
  • 消化器症状:53%
  • 皮膚症状:47%

さらに、喉頭・循環器・神経症状は1gOFCでのみ認められ、グレード3症状もすべて1gOFCで誘発されました。

また、アドレナリン筋注はグレード3の呼吸器症状・喉頭症状に対して3例に投与され、うち1例は複数回投与を要しました。


6. 何が「陽性」と関連していた?(即時歴とSPT)

6-1)即時型症状の既往

全OFCでみると、マカダミアナッツの即時型症状の既往は、OFC陽性と関連していました(陽性群で有意に多い)。

6-2)SPT(スキンプリックテスト)

SPTを実施した症例に限る解析では、OFC陽性群で膨疹径が大きい傾向が示され、特にOFC全体の解析で膨疹径に有意差を認めました。
さらに、膨疹径6mm以上の症例は全例OFC陽性でした。

本研究では、「SPTはOFC陽性のリスク評価に有用な可能性がある」ことを示唆しています


7. この研究からのメッセージ(臨床・家庭・学校に向けて)

医療者向け(OFC設計)

  • 1g(約1/2個)でも重篤症状のリスクがあるため、十分な事前準備が必要です。
  • 初回の負荷量は1gよりもさらに減量することも検討すべきと考えます。

保護者向け(「必要最小限の除去」と「自己判断の危険」)

下にも記載しているように、1つのアレルギー拠点病院に受診した患者さんのみが対象であり、全国のお子さんすべてを、本研究の結果に当てはめられるものでは決してありません
しかし、木の実アレルギー(例:くるみ・カシューナッツ)を契機に、未摂取のマカダミアナッツまで一律に除去してしまうケースが現実にありますが、不要な除去を招く可能性があります。
その一方で、自宅での“初回摂取”にはリスクもあることが示唆されため、不安がある場合の導入方法は主治医と相談し、適切なリスク評価の上進めていくことが重要です。 自宅で食べ進めていくとしても、他の木の実類等と同様にいきなり一粒などではなく、ごく少量のかけらなどから段階的に試してみるのがよいかもしれません。

学校・園の先生向け(症状の出方の特徴を知る)

本研究では、OFC陽性時に呼吸器症状が最も多いことが示されました。
誤食時も「皮膚症状(じんましん)だけ」とは限りません。日頃から、息が苦しい/咳が止まらない/声が変/反復する嘔吐などを“危険なサイン”として共有し、アナフィラキシー対応(エピペン・救急要請)の体制整備につなげることが重要です。


8. 限界(研究の位置づけ)

アレルギー拠点病院で行った単施設・後方視的研究であり、SPT抽出液濃度の統一がないこと、SPT実施が一部症例に限られること、総負荷量が主治医判断であることなどから、選択バイアスや一般化可能性に限界があります。
それでも、日常診療で行われているマカダミアナッツOFCの実態を日本で初めてまとめた点に意義はあり、今後も引き続き研究をし実態を明らかにしていく必要があります。


まとめ

  • マカダミアナッツOFC(66件)では、1gOFC陽性率27%、10gOFC陽性率12%
  • 陽性者のうちアナフィラキシーは、1gで52%、10gで3%。少量でも重篤症状が起こり得る。
  • 1g陽性者の78%は初回1/3摂取で誘発、発症までの中央値は12分
  • 誘発症状は呼吸器が最多(68%)。喉頭・循環器・神経症状、グレード3は1gでのみ
  • 即時歴SPT膨疹径がOFC陽性と関連し、6mm以上は全例陽性