〜“スクリーニング検査”は原則おすすめしません〜

Q. きょうだいに食物アレルギーがある場合、アレルギー検査をしてから離乳食を始めるべきですか?

外来でもよくいただく質問です。

結論から言うと、その赤ちゃん自身が“食物アレルギーを疑う症状”を経験していなければ、離乳食前のアレルギー検査(血液検査・皮膚テスト)を“スクリーニング目的”で行うことは基本的に推奨されません。
理由は、検査で陽性でも実際は食べられる(偽陽性)が少なくないからです。


なぜ「検査してから」が必ずしも安全ではないの?

きょうだいに食物アレルギーがあると、「次の子も発症するのでは」と心配になるのは自然なことです。確かに、アレルギーは遺伝と環境の二つの相互作用により発症するため、「遺伝」を心配されるのはごもっともと思います。

しかし、症状のない赤ちゃんに検査をすると、“食べても症状が出ない陽性”がとても多く、かえって混乱や不必要な除去につながりやすいことがわかっています。

米国の大規模研究(0〜21歳、食物アレルギー児の兄弟)では、

  • きょうだいの53%が検査陽性(感作あり)なのに症状なし
  • 一方で、同じ食物で「検査陽性+症状あり(臨床的に食物アレルギーあり)」は13.6%
    と報告されました。

この研究は結論として、症状のないきょうだいに対する検査は正当化しにくく、誤診や不必要な除去を招きうると述べています。(参考文献1)


「スクリーニング検査」のデメリット

症状がない段階で検査をすると、次のような不利益が起こりえます。

  • 偽陽性(陽性=必ずしも「食べられない」、ではない)
  • 不要な除去 → 栄養・QOL・家庭負担の増大
  • 離乳食導入の遅れ(本来は早期導入が推奨される食材も遅れる)
  • 痛み・費用・受診負担

きょうだいが食物アレルギーというだけで「先に検査してから」と進むより、適切な順番で、年齢相応の形で導入していく方が望ましいことが多いです。


例外:検査や専門医と相談を考えるべきケース

次の場合は、自己判断で進めず小児科(可能ならアレルギー専門医)に相談してください。

1) すでに“疑わしい症状”がある

  • ある食材を食べた後にじんましん、咳、ゼーゼー、反復する嘔吐、顔色不良などが出た
    同じ食材の再摂取は一旦中止し、評価が必要です。

2) 湿疹やアトピー性皮膚炎が長引いたことのある乳児

  • 湿疹やアトピー性皮膚炎の経験がある場合は、食物アレルギーを発症するリスクは高くなるため(参考文献2)、離乳食開始前に医師に相談しましょう。(参考文献3)

食物アレルギーに配慮して離乳食をどう進める?

1) 「開始時期」を遅らせすぎない

多くのガイドラインで、離乳食(補完食)は生後4か月未満には開始せず、発達の準備が整った時期に進めることが推奨されています。

2) 湿疹のコントロールが重要

湿疹が強い状態は、食物アレルギーのリスクと関連しうるため、離乳食の前に「皮膚を整える」ことが大切です(洗浄・保湿・必要な外用治療)。
「湿疹が強いまま、食材の導入だけを頑張る」のはおすすめしません。早めに医療機関で相談しましょう。

3) アレルゲン食品も“年齢相応の形で”導入する

EAACIの予防ガイドラインでは、地域の状況に応じてピーナッツを補完食として導入すること、また加熱卵を補完食として導入することが提案されています。(参考文献4)
(※ナッツ丸ごとは誤嚥リスクがあるため、必ず安全な形にします。)
日本においては、ピーナッツや木の実類の開始時期は明確に定められていませんが、少なくとも加熱卵・牛乳・小麦については、「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」(参考文献5)に従って進めることをお勧めします。

4) 「動画教材」を活用する

環境再生保全機構(ERCA)が、「食物アレルギーに配慮した離乳食教室(動画配信)」を公開しており、離乳食の基本と“アレルギーに配慮した進め方”がまとまっています。
「どう始めるか」の不安が強い方は、まずここから見ると整理しやすいです。

https://www.erca.go.jp/yobou/event/r02remote01/index.html


受診の目安(この場合は自己判断で続けない)

次の症状があれば、その食材は一旦中止して医療機関に相談してください。

  • じんましん、顔の腫れ
  • 咳、ゼーゼー、声がれ、呼吸が苦しそう
  • 繰り返す嘔吐、ぐったり、顔色不良

まとめ

  • きょうだいに食物アレルギーがあっても、症状がなければ“離乳食前のスクリーニング検査”は原則おすすめしません。(偽陽性が多い)
  • 例外は、すでに疑わしい症状がある場合、また長引く湿疹やアトピー性皮膚炎のある乳児など(医療機関で相談)。
  • 進め方は「遅らせない」「湿疹を整える」「年齢相応の形で導入」。

参考文献

  1. Gupta RS, Walkner MM, Greenhawt M, et al. Food Allergy Sensitization and Presentation in Siblings of Food Allergic Children. J Allergy Clin Immunol Pract. 2016;4(5):956-962. doi:10.1016/j.jaip.2016.04.009
  2. Tsakok A, et al. Does atopic dermatitis cause food allergy? A systematic review. J Allergy Clin Immunol. 2016 Apr;137(4):1071-1078.
  3. 食物アレルギー診療の手引き2023
  4. EAACI Task Force. EAACI guideline: preventing the development of food allergy in infants and young children (2020 update).
  5. 授乳・離乳の支援ガイド2019年改訂版